本記事では、メタネーションについてまとめます。
メタネーションとは
二酸化炭素は、さまざまな要因で排出され、温暖化の原因となります。
さまざまな場面で排出される二酸化炭素を回収し、水素を触媒反応させてメタン(CH4)をつくる技術をメタネーションといいます。
ところで、メタンをつくりだすことにはどのような利点があるのでしょうか。
メタンは天然ガスの主成分であり、天然ガス用に利用される既存のインフラを利用して、送る・貯める・利用することができます。
新たな設備をつくるのには、維持管理も含め膨大なコストがかかりますので、既設設備を利用できることは、大きな利点となります。
メタネーションのポイントは、大気中に放出される二酸化炭素を減らすだけではなく、さまざまな用途に有効活用できるメタンを作り出すことができるという点です。
まさに一石二鳥の技術ですね。
簡単な計算をしてみましょう
過去のエネルギー管理士試験では、メタネーションで1モルの二酸化炭素をすべてメタンと水にするために何モルの水素分子が必要かを求める問題が出題されていますので、考えてみましょう。
まず、係数を無視して反応式を書くと、次のようになります。
CO2+H2→CH4+H2O(未完成)
次に、係数を求めていきます。
右の酸素原子Oが1個不足していますので、H2Oを2H2Oとすると次式になります。
CO2+H2→CH4+2H2O(未完成)
左の水素原子Hが2個、右の水素原子Hが8個ですので、H2を4H2とすると次式になります。
CO2+4H2→CH4+2H2O(完成)
式の左右で、各原子(C,O,H)の数が一致していますので、反応式はこれで完成です。
問題では二酸化炭素1モルに対して水素分子は何モルかを求めるので、4モルが答えとなります。
水素の色分け(グレー水素、グリーン水素、ブルー水素)
水素を得るためにはいくつかの方法があります。
水素を得る過程で発生する二酸化炭素の観点から、色分けをして呼びます。
水素の色分けとして、グレー水素、グリーン水素、ブルー水素があります。
グレー水素
化石燃料を使用してつくられた水素をグレー水素と呼びます。
水素をつくる過程での二酸化炭素排出には特に配慮しないものです。
水素をつくる過程で化石燃料を燃焼させるのでは、メタネーション全体としての効果が減ってしまいまいますね。
グリーン水素
再生可能エネルギーによってつくられる水素をグリーン水素といいます。
メタネーションでは、グリーン水素の使用が前提となります。
ブルー水素
化石燃料由来の水素でも、水素をつくる過程で発生した二酸化炭素の大気への放出を抑える方法をとる場合があります。
この方法で得られた水素をブルー水素といいます。
火力発電所で発電された電気によって水素を得る場合、排出ガスとして二酸化炭素が排出されます。
ブルー水素を得る方法の例として、火力発電所から排出された二酸化炭素を集めて地中に貯留する取り組みである「CCS」、「CCUS」があります。
CCS
「CCS」は、「Carbon dioxide Capture and Storage」の略で、日本語では「二酸化炭素回収・貯留」技術と呼ばれます。
火力発電所や化学工場などから排出された二酸化炭素を、ほかの気体から分離して集め、地中深くに貯留・圧入するというものです。
CCUS
「CCUS」は、「Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage」の略で、分離・貯留した二酸化炭素を利用するものです。
英語を見ると、CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)にUtilization(利用すること)が追加され、CCUSとなっています。
米国でのCCUS活用例として、二酸化炭素を古い油田に注入する事例があるようです。
古い油田に残った原油を圧力で押し出しつつ、二酸化炭素を地中に貯留しています。
この例では、二酸化炭素を削減できるほか、石油の増産にもつながります。
水素の色分け まとめ
実際には水素に色の違いがあるわけではありませんが、水素をつくる段階での環境負荷の度合いによって、グレー、グリーン、ブルーと呼び分けているのですね。
おわりに
本記事では、メタネーションについてまとめました。
- メタネーションで1モルの二酸化炭素を全てメタンと水にするには4モルの水素分子が必要
- この水素は、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を主として供給する
- 化石燃料由来の水素であっても、CCUSを適用すればブルー水素と呼ばれる
参考文献・サイト
資源エネルギー庁:知っておきたいエネルギーの基礎用語 ~CO2を集めて埋めて役立てる「CCUS」 ※CCS,CCUSの説明に参考として使用。
令和4年度 エネルギー管理士試験 電気分野 試験問題
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