国内で使用される電気の大部分を太陽光発電など再生可能エネルギーでまかなうことができれば、火力発電は不要ではないか?
という疑問を感じたことはないでしょうか。
一見すると実現可能なようにも思えますが、現状では「再生可能エネルギーがあれば火力発電を停止する」のは困難と考えられます。
本記事では、なぜ再エネがあっても火力発電を停止できないか?という疑問に答えるべく、火力発電設備のもつ性質についてまとめました。
本記事を読むことで、一般的にあまり知られていない火力発電の裏側を理解することができます。
それでは、解説していきます。
火力発電設備を一旦停止すると、再始動に時間がかかる
火力発電設備の再始動にかかる時間
火力発電は、発電したいときにすぐ起動して発電できるイメージがあるかもしれません。
しかし実際は、火力発電設備の始動には、数時間~数日の時間が必要となります。
始動に必要な時間は、火力発電設備の種類や規模、停止していた時間などによって異なりますが、「数時間~数日」という時間は、意外と長く感じられないでしょうか。
始動に時間がかかる理由
つぎに、火力発電設備の始動に時間がかかる理由を解説します。
火力発電では高温、高圧の蒸気を使用します。
いきなり温度や圧力を上げすぎると、設備に負担がかかります。熱による膨張などのためです。
このため、蒸気の温度・圧力を上昇させるスピードにも制限があります。
早く起動したいからといって、どんどん温度・圧力を上昇させていいというわけではないのですね。
つまり、天気が急に変わって、太陽光発電の出力が急激に落ちてしまっても、瞬時に火力発電設備を起動してカバーする、というわけにはいかないのです。
火力発電設備を再び始動するにはコストもかかる
上述のように、停止した火力発電設備を再び始動するには時間がかかりますが、それだけではありません。
冷えた設備を加熱するには燃料が必要ですから、コストもかかります。
火力発電設備は巨大な設備ですから、かかるコストも大きくなることが予想できますね。
火力圧電を低出力で運転すると効率が低下する
火力発電を瞬時に起動できないならば、火力発電機を低出力で運転しておくのはどうでしょうか。
始動を待つ必要がなくなるので、太陽光発電などの発電量の変化に瞬時に対応できそうですよね。
しかし、低出力で運転しておく場合に、考えなくてはならない問題があります。
火力発電設備は、需要にあわせて、最大出力以下の出力で運転することがあります。
これを部分負荷運転といいます。
部分負荷運転をしたときの問題点として、効率の低下があげられます。
つまり、同じ出力に対して、消費する燃料の量が多くなってしまいます。
せっかく再生可能エネルギーによって、発電時に使用する燃料を減らすことができても、火力発電の効率が低下することで、火力発電で使う燃料が増えてしまうのです。
火力発電では運転できる出力の下限がある
部分負荷運転ができるからといって、あまりにも出力を小さくするのは問題があります。
とたとえば、火力発電装置の運転を支える自動制御装置の動作が不安定になったり、燃焼が不安定になったりします。
このため、定格出力よりも極端に小さい出力では運転を継続することが困難です。
まとめ
火力発電のもつ特性から、再生可能エネルギーが普及しても、現状では火力発電を完全にゼロにすることが困難な理由を紹介しました。
火力や再エネなど、それぞれの電源のメリットを生かし、共存していくことが安定供給などの面でも重要となります。
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