配電線路を使用して需要設備に電力を供給するにあたって、一般に、電圧一定の方式(定電圧方式)が採用されています。
負荷が変動すると、配電線路などの供給設備に流れる電流も変動します。
すなわち、負荷変動により供給設備における電圧降下が変動することになり、結果として負荷端の電圧が変動します。
本記事では、負荷端の電圧変動を低減するためのインピーダンス低減についてまとめます。
配電線の太さ・長さの検討による対策
まず、配電線の太さ、長さを検討することで配電線路のインピーダンスを低減させる方法についてまとめます。
まずは単純に、抵抗の式だけで考えてみると分かりやすくなります。
電線の抵抗を表す式
まず、電線の抵抗Rは次の式で表されます。
R=ρ×L/A
ただし、
ρ:抵抗率
L:電線の長さ
A:電線の断面積
とします。
つまり、電線の抵抗は、抵抗率ρが同じならば、断面積Aに反比例し、長さLに比例します。
言い換えると、太いほど抵抗が小さくなり、また短いほど抵抗が小さくなります。
以上を踏まえて、インピーダンスを低減する方法について説明します。
インピーダンス低減策 その1:太線化
インピーダンス低減策1つ目は、配電線の太線化です。
先述の、電線の抵抗を表す式の断面積Aを大きくすることで、抵抗Rが小さくなり、インピーダンスが低減されます。
インピーダンス低減策 その2:こう長の短縮
インピーダンス低減策2つ目は、配電線の「こう長」の短縮です。
先述の、電線の抵抗を表す式の長さLを小さくすることで、抵抗Rが小さくなり、インピーダンスが低減されます。
変圧器による対策
インピーダンス低減策として、配電線の長さ・太さを検討する以外に、変圧器のインピーダンスを検討する方法もあります。
インピーダンス低減策 その3:短絡インピーダンスが小さい変圧器の採用
変圧器の短絡インピーダンスを低減することで、常時の負荷変動による電圧変動が小さくなります。
これは、次式で示すオームの法則から理解できます。
V=ZI
ただし、
V:電圧降下
Z:変圧器の短絡インピーダンス
I:負荷電流
とします。
変圧器の短絡インピーダンスZが小さいほど、負荷変動(すなわち負荷電流Iの変動)によって生じる電圧降下Vの変動は小さくなります。
ただし、短絡インピーダンスの小さい変圧器では、短絡事故が発生したときに、短絡電流が大きくなります。
短絡電流は、電力供給設備の過電流耐量を超過しない値に抑制する必要があります。
仮に、遮断器で遮断できないほどの短絡電流が流れたとすると、たとえば「電線の溶断を待つしかない」という事態にもつながりかねません。
こうなってしまうと危険なのはもちろんのこと、被害が拡大し、再び設備が使えるようにするために時間もお金もかかります。
遮断器は、短絡事故が起きたときに大電流を安全に切るための機器ですので、確実に遮断できるようにしておかなくてはなりません。
まとめ
最後に、エネルギー管理士試験の出題ポイントをまとめます。
- 負荷端の電圧変動を抑制するため、供給設備のインピーダンスを低減することが有効です。
- 供給設備のインピーダンスを低減する方法として、配電線のこう長の短縮、短絡インピーダンスの小さい変圧器の採用などがあります。
- 短絡インピーダンスの小さい変圧器の採用する場合は、短絡電流増加による影響を考慮する必要があります。
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