住宅地や山の中で、送電鉄塔や送電線を見かける機会があると思います。
住宅地にある送電鉄塔と、山の中にある鉄塔を比べると、大きさが違いますね。
また、電柱は送電鉄塔よりも、さらに小さいですね。
この大きさの違いは、主にどんな理由によるものでしょうか?
答えのひとつとして「電圧の大きさ」があげられます。
電圧が大きいほど、地面からの距離を確保する必要があります。
すると必然的に、電圧が大きい鉄塔は、高さが高くて大きいものを使用することになります。
一般に、山の中を通る送電線のほうが、市街地を通る送電線よりも電圧が大きい傾向があります。
ただし、市街地の送電線のほうが電圧が小さいとはいっても、66,000V(ボルト)などです。
一方で、家庭にあるコンセントの電圧はどれくらいでしょうか?
家庭用コンセントの電圧は、ほとんどが100Vや200Vです。
全然ちがいますね。
火力発電所などで発電した電気を家庭まで届けるためには、たとえば500,000V(50万ボルト)など非常に大きい電圧で送電しています。
それではなぜ、最初から100Vや200Vで送電しないのでしょうか?
発電所から家庭まで、ずっと100Vや200Vで送電することができれば、500kV(50万ボルト)などの高電圧よりも安全に送電できそうですよね。
高電圧で送電する理由のひとつは、電力損失(電力を送るときのムダ)を小さくするためです。
どういうことなのか、以下に説明します。
電圧が大きければ電流は小さくていい
電気回路の基本的な式として、電力は電圧と電流の積(かけ算)で表されます。
すなわち、電力=電圧×電流です。
この式から、同じ電力を送ると仮定した場合に次のことが言えます。
- 電圧が大きければ、電流は小さくていい
- 電圧が小さければ、電流を大きくしなければいけない
電流が小さいほど電力損失は減る
もうひとつ基本的な式として、電力の損失は次の式で表されます。
電力損失=電流×電流×電線の電気抵抗
「電線って電気抵抗があるの?」と思うかもしれません。電線は電気を送るためのものですから、大きな抵抗があっては困りますね。
ただ、発電所から家庭まで電気を送るとなると、かなり長距離となります。
短距離では抵抗が小さい電線であっても、長くなるほど、抵抗は大きくなってしまうのです。
電力損失の式に話を戻すと、電流が2回 掛け算されていますね。
2回 掛け算される電流の大きさは、電力損失に大きく影響してきます。
具体的には、電流が2倍になると、電力損失は4倍になることを表します。
電流が3倍だと電力損失は9倍です。
電流の増加に対して、電力損失はさらに大きく増加してしまいますね。
反対に、電流が半分になると電力損失は4分の1、電流が3分の1になると電力損失は9分の1です。
電流が減少すると、電力損失はさらに大きく減少します。
つまり、電圧を大きくするほど電力損失を減らすことができる
以上の2つの式から、次のことがわかります。
- 電力損失を減らすためには、電流を小さくする必要がある。
- 電流を小さくするするためには、電圧を大きくする必要がある。
すなわち、電圧を大きくするほど電力損失(電気を送るときのムダ)を減らすことができるのです。
これが、わざわざ500,000V(50万ボルト)などの高電圧を使用して送電する理由のひとつです。
おわりに
本記事では、電気回路の基本的な式から、「なぜ高電圧で送電するのか」という身近な疑問を解決してみました。
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