乾電池を捨てる時にプラスとマイナスの端子にテープを貼っているのを見たことがありますよね。
なぜテープを貼っているのでしょうか?
本記事では、この身近な疑問から、電気を理解するのに欠かせない「オームの法則」について紹介します。
この記事を読むと、電気を勉強したことがなくても、すこしだけ電気に詳しくなることができます。
それでは、いきましょう。
オームの法則
唐突ですが、理科の授業で「オームの法則」を勉強したことがあるかもしれません。
でも、生活の中で何の役に立つのか、わからないですよね。
また、「オームの法則ってなんだっけ?」と忘れてしまっている方も多いかと思います。
オームの法則は、簡単に説明しますと、「電圧は、抵抗と電流の かけ算 で表される」という法則です。
式で表すと次のとおりです。
V=R×I
ここで、Vは電圧、Rは抵抗、Iは電流です。
それでは、これが電池を捨てるときにテープを貼る理由と、どのように関係してくるのでしょうか。
乾電池の電圧
電圧は、水位差のようなものであることを、別の記事(電位と電圧の違い)で紹介しました。
一般的な単3などの乾電池の電圧は1.5Vであることが広く知られています。
※V(ボルト)は電圧の単位です。
乾電池のプラスとマイナスの間には、1.5Vという電圧があるということですね。
実際にテスターで測定してみると、1.6Vなど、少し高めだったりします。
そして、乾電池を使用していくと、電圧が1.0Vなどに低下してきます。
電圧が低下してくると、リモコンで使用していればリモコンの操作が効きにくくなりますし、懐中電灯に使用していれば暗くなったりするわけです。
また、電池は通常、プラスとマイナスの端子がむき出しですので、端子間には常に電圧がある状態ということになります。
ショートとは
乾電池を捨てるときは、電池回収BOXなどに入れることもありますね。
このときに、もしも、電池同士のプラスとマイナス端子がつながって、電気回路ができてしまったらどうなるでしょうか。
または、金属などでプラス端子とマイナス端子を接触させてしまったらどうなるでしょうか。
実はこれが、「ショート」です。
乾電池のラベルなどに「ショートさせないでください」などと書かれているのを目にしたこともあるかもしれません。あの「ショート」です。
ショートはなぜ危険か
それでは、なぜショートさせてはいけないのでしょうか。理由を考えてみましょう。
一般に、金属は電気抵抗がゼロに近いものです。
ここで、さきほどの式を思い出してみてください。
V=R×I
でしたね。
これを少し変形して、ショートしたときに流れる電流を求めてみましょう。
式を変形して電流Iを左にもってくると、次の式になりますね。
I=V/R
この式に、R=0を代入してみましょう。すると、どうなるでしょうか。
I=∞(無限大)になってしまいました。
つまり、乾電池であっても、金属などでプラスとマイナスを接続(=ショート)すると、とても大きな電流が流れることを意味します。
ショートすると大電流が流れて危険、ということです。
ただ、実際は無限大の電流が流れることはありません。
というのも、乾電池には内部抵抗という抵抗がありますから、先程の式(I=V/R)のRが大きくなります。
そして、金属といえども多少は抵抗がありますから、これによってもRが大きくなります。
これら2つにより、電気抵抗Rが大きくなりますので、電流が抑えられるわけですね。
とはいえ、ショートが安全ということにはなりません。
いずれにしても、大きな電流が流れますのでご注意ください。
大電流が流れることで、電池が破裂、発火するなどのおそれがあります。
捨てるときにテープを貼る理由
以上をまとめますと、次のようになります。
- 電池のプラス端子とマイナス端子の間には電圧があります。
- 電池を捨てるときに、電池同士の接触や金属との接触により、プラス端子とマイナス端子がつながってしまうことがあります。
- すると、電池に大電流が流れます。(オームの法則)
- 電池に大電流が流れると、電池の破裂、発火などにつながるおそれがあり、危険です。
そこで、ショートが起きないように、プラス端子・マイナス端子にテープを貼ります。
これが、電池を捨てるときにテープを貼る理由です。
なお、プラス端子かマイナス端子のどちらかをテープで覆っていれば、ショートは起きません。
ただ、テープが剥がれてしまうかもしれないことを考えると、プラスとマイナスの両方に貼っておくと、より安心できます。
おわりに
本記事では、電池を捨てるときにテープを貼る理由を、オームの法則と関連づけて説明してみました。
このように、オームの法則は日常生活の「なぜ?」を解決できる手がかりとなりますから、覚えておいて損はないと思います。
個人的に、10年以上の電気関係の実務経験の中で、いちばん使う(役に立っている)法則でもあります。簡単なものから難しいものまで、広く応用できます。
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